「エリザベート」2005年版
■2005/09/08(木)
 今回は、内野−石川−浦井ライン。何回めかの観劇だと、どうしても「前回と比べたら」になっちゃいますね。悪評高い電飾は無くなりましたが、布にプロジェクターで背景を映し出していました。それが少々貧乏くさい絵なのがツライ。シシィの落下シーンは電飾からそのまま移したのかと思うような荒い絵だし、落ち方の「絵」も相変わらず漫画チック。良くなったのは音響。座った場所のせいかもしれないけれど、歌声も台詞もオケの音も、すべてクリアに聞こえました。アンプが山積みだったもん。ここにお金をかけてくれたとしたら、とても嬉しいことだ。
 演出は前回と殆ど同じ。何度も言っているけど、私が踊るとき→精神病院は納得できない。たぶん、あと3回言うと思います。「私が踊る時」より「夢とうつつの狭間」の方がしっくり来るんだけどなあ。トートとエリザの出会いで、「私を帰して!」って、もとから無かったっけ?エリザはただボーッとトートを見ているだけだし、トートもいつからフォーリンラブなのか、わかりづらい。
 衣装は、トート様に新調があったかな?初登場(ゴンドラ降り)の場面は新調だと思う。エリザベートなど、他の人は同じかな?群舞の振りも少々変更点有り。一部トート・ダンサーが踊りすぎて鬱陶しい場面があったな。アンサンブルの出番はほぼ同じ。

 タイトルロールの一路さんは、本当にお疲れ様と言いたい。シングルでずっとだもんね。声は出ている。でも、ビジュアルがだんだんきつくなってきているかなあ。口元とか。首筋とか。人生を戦い抜くイメージは、やっぱり薄いかな。エキセントリックとか、そんなこととは無縁の真面目な皇后様だよね。破天荒な女性がしきたりに縛られ苦しむとか、死に惹かれるとかは、感じにくい。安定感がありすぎるかも。お見合いの場面は可愛かったよん。
 ウッチーは、肩が入りすぎるクネクネした動き多し。以前はマリコさん系だったけど、今回はオサ系。ナルシスト度アップ。エリザに向ける愛が自分に向かっている部分があるような気がする。それが、「エリザの分身」度アップにも繋がっているような気がするので、これはこれでありなのかな。しかし、耽美色は低下。胸元が開いていても全然ドキドキしないのはなぜだろう?歌声は延びている。昨年よりも余裕がある。1幕のラストで、エリザベートが「私の人生は私だけのもの」と歌ったときも無反応。もとからこんな演出だっけ?手が時々ペンギンさん。
 フランツの石川さんは
とっても良かった!
以前は無駄に熱いだけだったのに、お見合いの辺りはとっても若いし、その後も妻を深く愛しているのがすごくわかる。寝室の場面とか。鏡の間の歌も泣ける。妻の自由を認めること、と、皇帝の義務を果たすことを、一生懸命両立させようとしている。最後は髪を振り乱してる。絶対トートより彼の方がエリザベートを理解し愛しているよ。
 ルキーニの高嶋兄は特に変わらず。
 ルドルフの浦井くんは全体的に良くなった。オープニングの思い詰めた表情も、歌の高音も、ダンスのキレも良くなった。ついでにメイクも良くなった気がする。あとは軍服での立ち姿だね。
 寿ひづるさんの皇太后は大迫力。終始低い声。フランツが本格的に実権を取るまでは、宮廷に「君臨」していたんだ、と思わせます。嫁に厳しいのも、嫁が嫌いというだけではなく、王朝に必要な義務を果たせと言っているのであって、あくまでも政治的見解。でも、こういったゾフィーだから、ハプスブルクを支えられたんだろうなあ、と思いました。死ぬ前のソロは、彼女自身も「自分を殺して、全て王家に捧げて」きて、それは、とても困難な道のりだったんだろうなあ、なんてこと感じました。
 藤本さんのエルマーは、熱い、熱い。こういうエルマーがいるのなら、さららんのエルマーもOKよね! 
 そんちゃんは、オープニング(上手側)とオペラはアランソン公爵夫人で青いドレス。歌のソロは結婚式の「みなさん」、鏡の間の前の「ザワークラフト」など、前と変わらず。勝ちゃんも、親戚だったり白い鬘の侍従だったりカフェの店員だったりルドルフ唆し組(髭付き)だったり、こちらも前と同じ。
 
 一度幕が降りると、どうしても下手を見ちゃうよね〜。皇帝陛下、出てこないかしら。カーテンコールの時、みんなして前に出るとき躓く、という小ネタ有り。客に受けたせいか、浦井くんも手を叩いて大受けしていました。


■2005/09/12(月)
本日は、トート:山口、フランツ:石川、ルドルフ:パク。

 前回褒めた音響ですが、今日はあんまり良くありませんでした。2階後方はダメなのかな。山口さんの歌にエコーがかかりすぎ。風呂場で聞いているみたい。オープニングなど、何回かマイクが入らないことがあった?
 
 山口さんは囁き系の歌い方が多く、やっぱりブレスの入れる場所に違和感。アサコの「私だ(ブレス)け、に〜」以上に不自然。自分の歌声に酔っているなあ、と、見ていると、突然演技が熱くなる。ちょっと笑ってしまった。もうトート様には見えないなあ。コスプレする山口祐一郎。白塗りが、ちょっと肌色に近くなったような気がしなくもない。
 
 石川さんは先日よりさらに押さえた演技。シシィへの求婚ですでに泣ける。「義務の重さに夢さえ消える」。自分が背負うべき義務がどんなに重いか熟知していて、その中の、ただひとつの安らぎをシシィに求めているんだなあ、と。シシィ、ちゃんと人の話を聞けよ!と思うわ。寝室、鏡の間、いたるとろでシシィへの深い愛を感じます。先日はルドルフへだけは熱く、怒りが強かったけど、今日は違うルドルフのせいか、絶望感の方が勝っていました。いいなあ、石川フランツ。後はフィナーレのセリ上がりを望むだけだ!

 パクさんは低音がちょっと聞き辛かった。本人の調子なのか、マイクのせいなのか。浦井くんはデコマイクで、パクさんはヘッドフォンマイクだから?高音は伸びていました。大人の皇太子ですよね。ルドルフの行き着く先は、浦井くんは「死」で、パクさんは「破滅」なんだよね。微妙に違う。

 トート閣下と皇太子ルドルフ殿下のキッス は、内野閣下と浦井殿下に比べると、やけにアッサリでした。唇が触れあっている程度。どっちがイヤがったの???

 勝ちゃん、ルドルフそそのかし組は、髭無しでした。前回は誰かと間違えたみたいです。すいません。

 一路さんは、狂気とか死がまったく感じられません。初演からだから、もういいんですけど。ただ、フランツが真摯な愛情を注いでいるだけに、たんなる我が儘な女に見えてしまうんですよね。「本当のところシシィはものすごいエゴイスト」って、まんまエゴイストです。そういった役作りなら納得できるんですが。精神病院も、「オペラ」のルードヴィヒの死なども、彼女の血筋がそれらに近いということを、もっとエリザベート本人から感じ取りたいんですよね。それが皆無だから、ただの我が儘にしか見えないのです。
 
 作品の持つ耽美性があんまり生かされていませんよねえ。もっとウィーン版寄りにするか、まったくの宝塚版にするか、演出家を変えるか、どれかにすると割り切れるんだけどなあ。

 そうそう、「落下するシシィ」は2階後方からだと見えませんでした。小池先生、もっと考えて作って下さ〜い。じゃないと、シシィが「なんで」黄泉の国へ行っちゃったか全然わかりませんよ〜〜〜。あと背景で気になるのが「夜の海」の三日月。あまりにもポップな絵で、雰囲気台無しなような気が・・・。ジャズのショーとかで使いそうな絵。


■2005/09/17(土)
 本日は、内野−鈴木−パク。2005年版初めての綜馬さんです。と、言いつつも、前半の「李香蘭」の脱力からなかなか復帰できず、ちょっと集中力に欠けたため、時々睡魔様到来。おまけに1階後方席は、深く腰掛けると足がつかない(かかとまでつかない)ので、腰も肩も背中も痛くなりました。見やすいんだけどね。
 今回は音響が良かったです。特にパクさん。前はなんだったんだろうなあ〜。ウッチーの声にエコーがかかるのは、それほど違和感はありません。歌唱力的な面を考慮すれば。
 ウッチーのトート様は、祐ちゃんより好みだなあ。エリザへの視線はラブラブ。「愛と死の輪舞」の時の衣装のヒラヒラは、2階から見るとライトが当たるためか、青く見えたのですが、1階から見たら灰色でした。
 綜馬さんのフランツも良かったです!!!いろんな義務への耐え方がね。くうううううううっっ〜〜〜、と、身悶えしちゃいますね。感情を抑えまくっている皇帝陛下が、ただひとつ見せる人間らしい感情、それがエリザベートへの愛なのです。いいよねえ。禅さんも好きだし、綜馬さんも好きだわ。ゾフィーが死ぬ前の掛け合い、手へのキスって前からあったっけ?見落としていたのかな。あれが凄く良かったよ。いままで愛し尊敬していたけど、この時をもって訣別する、自分は母よりシシィを取る、そんな決意。
 パクさんは大熱演。前回よりも熱い。テンション高い。トート役が違うせいなのかな?「皇太子」としての立場を全面に押し出している役作りですよね。トートから銃を渡されたとき、全身の力が抜けるというか、もういいや、という思いというのか、そんなものが感じられました。宙を見つめていましたよね。現実、この世ではない場所が、彼の目に映ったのでしょう。キッス は、祐ちゃんは唇が触れているだけだったのに、ウッチーは、「さすがに舌は入れていないだろう」ってぐらい、深く深く長めにブチューッ としていましたね。ウッチーの意志なのか。
 エリザの一路さんについては、もう、頑張ってくれとしか。好みではないけど、シングルで演じ続ける姿には感服するばかりです。
 本日のツボは、見合いの場面で、ケーキ(なぜかシシィにだけ出る。子供だから?)の苺を落とし、拾ったヘレネがシシィに渡し(拾うのも渡すのも貴族としてはどうかと)、受け取ったシシィに、首を振りながら「ダメダメ、私に渡してください」って演技をしていた勝ちゃんと、「え〜、やだやだ〜」と答える演技をしていた一路さんでした。


■2005/09/24(土)
 2005年版My最終回は、内野−鈴木−井上ライン。井上君をナマで観るのは、もしかして初演版以来かも。

 ウッチーは、今日はとても好調のようだった。声も出ているし、演技も適度に濃くてクドい。踊りもキレがある。あくまでも当社比だけど。エリザベートへの愛は、一途だな。本当に、ある意味、純愛なのだなあ、と。「♪ お前しか見えない〜」。確かにな、というカンジです。もっと進化していく姿を見たかったなあ。

 綜馬さんの耐える姿は、辛くも、楽しい。どっちだい!とは言わないように。義務の重さに耐えるのがデフォルトな皇帝陛下。母の指導の通り(マザコンとは、ちと違うと思う)、自分の感情を押し殺して生きてきたフランツにとって、ただひとつ、自分から求めたものがシシィへの愛なんだろうなあ。彼にとっては安らぎではなかったかもしれないけれど、それでも、他には変えられないものだったんだろうなあ。最終答弁で、トートがルキーニへ短剣(ペーパーナイフ?)を渡そうとするのを必死で阻止しようとするフランツ。なりふり構わぬ彼の姿に、どれだけ彼が、シシィを愛し、生きていて欲しかったかが窺えます。涙無くしては見られない。

 井上君は、他のルドルフ役2人に比べると細いこともあって、ちょっと子供っぽいかなあ。子供ゆえの純粋さが、死へ結びついたというのか、トートに簡単に操られすぎているというのか。もうちょっと「皇太子ゆえの葛藤」が有る方が、私は好きだなあ。あくまでも個人的意見。高音は伸びているけど、低い声が、やや聞き取りづらいかな。

 一路さん、高嶋さんは、前と同じく。シングル、お疲れ様です。

 勝ちゃんの腕は、相変わらずピキっとしている。好きだなあ。ミルクとかエーヤンのあたりに出ている皇太子殿下をチェクしたいと思うのに、勝ちゃんを見ちゃったら、もう他を観ることができないのだ。次はいつかなあ。ミー&マイなのかなあ。そんちゃんも、しみじみ見てきたよ。ヅカ的には「美貌」では無いとされてきたけど、外の舞台に立てばじゅうぶん美人の部類だよねえ。
 
 何度見ても、勝ち誇って「私が踊るとき」を歌った皇后陛下が、次の場面では精神病院で「強い皇后を演じている」と言う流れは納得できないなあ。病気を移されたことがきっかけで放浪の方が、流れ的にはいいと思うんだけど。それを言うなら、そもそも「私が踊るとき」はいらないのかなあ。改訂に次ぐ改訂でいろいろ矛盾も出てきているので、次回、もし主要キャスト総入れ替えになるのなら、演出も見直して欲しいなあ。

 劇場内がとても寒かったです。頭上から冷たい風が吹きまくっていました。ルドルフ葬儀の場面、「♪ 寒くないの 震えているの」で、「寒いです。震えています。」と心の中で返していました。