「ラヴ・レターズ」
■2005/08/11(木)
 芝居ではなく朗読劇です。幼馴染みの男女の、50年に渡る関係を、交わした手紙で綴っていきます。自由奔放なメリッサ(紫吹淳)、生真面目なアンディ(入江雅人)。小学校2年の時、メリッサが転校してきたことから二人の関係は始まった。幼い友情から、お互い異性として認識し、結局は一緒になることが無くても、かけがえのない友情で結ばれる。例えそれぞれが結婚して、なぜ隣にいるのが自分ではないのかと自問自答したとしても、決定的に離れることなく、お互いが、なくてはならない自分の中の「核」として存在させる。成人してからは実際に合うことはなく手紙をやり取りするだけの関係だったが、会ってしまうと即座にベッドになだれ込み。だが家庭と仕事を捨てることのできないアンディ。彼に会えないことからメリッサは何度目かのアルコール中毒になり、やがて死ぬ。
 端から見ると、さっさとくっついちぇばいいのにぃ!と思うけど、タイミングが合わないと、人間ってうまく結ばれないんだなあ、と。そして、結婚しても、幼き日のわだかまりは、うまく消化しない限り一生引きずるんだな、と。それでも、その苦しみは、ないことよりずっと幸福をもたらすのだろうか。友情であり、精神的な愛であり、ときには肉体を伴う愛でもあり、と、男と女を長い期間結びつけるのは、一種類の感情だけじゃないんだねえ。ギリギリ感が、なんともいえない緊張感をもたらします。
 朗読劇なので、客席に向かって並べられた2つの椅子に朗読者が座って、本を見ながら朗読していくのですが、最後、アンディが、もしあの時自分がこうしていたら、メリッサは、今、不幸の中死ななかったかも、と言う場面では、メリッサ役のリカちゃんは、本を閉じ、アンディ役の入江さんの方を向き、「いいのよ、アンディ」と静かに語ります。いいの、あなたがそう思ってくれただけで、私はもういいの、と、メリッサの気持ちが伝わってきて、泣けてきました。単純な恋愛ではない、まさに大人向けの作品でした。
 リカちゃんは、1幕の若い日は、白地に黒のストライプが入って、スカート部分はふんわり広がったフェミニンなワンピースにショートブーツ。2幕はベージュの、体にぴったりフィットしたセクシーなワンピース。1幕の勝ち気な「女の子」も可愛かったけど、結婚して離婚してアル中になって・・・と山あり谷ありの人生になった2幕の方は、座って本を読んでいるだけなのに、明確に「メリッサ」が伝わってきました。やっぱり、リカちゃんが舞台で作り出す「人」は好きだなあ。男とか女とか、関係ないね。