花組(日本青年間)「MIND TRAVELLER」
■2006/12/02 (土)
 男は、目覚めたら病院のベッドの上で、記憶を無くしていた。記憶構造の研究者リチャード・モリスは、治療費を無料にする代わり、彼の研究する「海馬へマイクロチップを埋め込み、記憶を復活させる」実験に協力しろという。了承した男は、手術までに外出許可を得、研究スタッフの一人の女医・パメラと共に町へ出る。そこで彼に「マックス」と呼びかける女が現れた。男の名はマックスなのか。どんな過去を持つのか・・・。

 まあ、小池作品です。世界を支配しようとするマッドサイエンティストがいて。コンピュータを使っての場面があって。自分探しで。最後は二人で旅立って。映像を多用して。役者に見せ場があって。なにがこっぱずかしいって、小池先生の思う「新しいもの」が、舞台として形になる頃には「新しいとはいえない」になっているところだよね。「NPO」とか。ストリートのダンスとか。ヒップホップとか。羞恥プレイかよ、っていうぐらい、見ている方が気恥ずかしい。愛川欣也が口にした瞬間、流行語の流行が終わる、ってのと同じような。ネタ自体も古め。竹宮恵子のネタにありそうだんだよね。間違っちゃいないけど、いまさら見せられても系。そのうえ、あっというまにネタが割れる。「混乱して甥を暴漢だと思っていたけど、先生の手術で正しい記憶が甦ったんです」って、それは、この医者が記憶を都合良く書き換えたってコトよね、とか、コインを埋め込んだペンダント、って掘り出せば隠し物がある、とか、1幕前半でバレバレだよーーーーー。これを前提として、どう捻るのか、と考えたけど、捻りなど無かったよ。
 
 そうは言っても、さすがに役者の使い方はうまいし、起承転結もハッキリしている。コレとコレをこう使って、と、先生の持ちネタの組み合わせであったとしても、泣いて苦しむまとぶんは美味しいし、キホちゃんも女医だろう、やっぱりとか。うまくあてているよね。

 まとぶんは、手慣れてる。手堅い。主演に違和感なし。違和感はむしろ「花組」って部分だよね。どーみても星組なのよ。ぶんぶんの面影があるのよ。できれば星組でトップになって欲しいなあ。もう無理なんだろうけど。歌も芝居も踊りも破綻無く、2枚目もコメディもイケる。背が低めかな?と、ちょっぴり思うけど、それはそれで「母性本能をくすぐる」系でいいのかも。
 キホちゃんは、歌声も綺麗だけれど、台詞の声も綺麗だ。聞きやすい。最後の方で、無言でリチャードを見つめているのがいい。台詞はなくても、非難しているのがわかるんだよね。写真なんかではキツめに見えるかもしれないけれど、案外よりそい系も良いのかも。
 まっつはどうなのか。私としては、もっと濃く、もっと毒が欲しいんだけどな。ケロとかたーたんとかを求めるのが悪いのか。ちょっと線が細いんだよなあ。
 ジュディ役の野々すみ花ちゃんは、いい!演技がうまい!!「HABA-CHANG」の衣装はぶったまげたが、似合っていたよ!子役で見ることが多かったように思うけど、女の子もいいじょ。
 めおちゃんは、組替えしたらスタイルが良いことに気が付いた。ガタイがいいんだよ。越リュウが比較対照じゃ小柄にも見えるわさな。
 としこさんは色っぽかった。マックスを誘っちゃうところがステキよ〜ん。さお太さんのおじさま芸もステキ。星原先輩は拝むしかないよ。うふ。

 若手のまとまりも良かったです。踊りの場面は、さすが花組!舞台装置はミラノ・スカラ座版「WSS」などでも見た、舞台左右に2階建ての骨組(っていうのか??)を上手く使っていました。舞台奥のセットも、開いたり、映像を映したり、なかなか面白い使い方でした。こういう目新しい装置はDC作品ならではですよね。


 今日の昼の部は、全ツ組が来ていました。カーテンコールでは、オサが立ち上がって拍手さ!微笑ましかったよ。