月組(宝塚大劇場)「飛鳥夕映え」「宝塚絢爛II」
■2004/07/10

 いやはや。ここ2作は月組だったので慣れたのか、サエちゃんの演技は全然OKだったよ〜。これぞトップ!というものは、正直言ってあまりないんだけど、別にいいんじゃない?という程度には思えます。台詞もはっきり聞こえるし、マイクの補助があるとはいえ声量もあるし。って、本来はそれが基本?でも、ここをクリアしてくるから、まあ、いいかと。サエちゃんが、リカちゃんとは全然違うタイプということもあり、「なぜリカちゃんがいないの〜」なんて喪失感は皆無でした。新生月組を見る前に、リカちゃんは5回見て、そのうち3回で「ステイ」を聞いたもんだから、思い切れているのかしら?どちらかというとコモちゃんがいない現実の方がショックだったりしますわ。組総見があるせいか、午前も午後も客席は8割以上の入りでした。
 芝居(内容)は、ま、浅いっちゃ浅い。鞍作(入鹿)がなぜ殺されなくてはならないのか。それが鎌足一人の妬み、それも逆恨みに近いような気がして、「大化の改新、ムシゴヤの改心」と唱え続けた身からすると、こんな単純な理由だったのか?と思っちゃうんですけど・・・。名家に生まれたばかりに何の疑問も障害もなく国を統べる立場になる鞍作、ってもしかしてサエちゃんに被っているのだろうか?でも、かしげも御曹司だし。今年は試練の年だけど、と余計なことを考えたり。ものすごく正直に言うと、「花の業平」での業平vs基経ほどの迫力はありませんでした。それが柴田先生の脚本のためか、大野先生の演出のためか、出演者によるものなのかは不明です。まあ、それでも、衣装は華やかだし、サエちゃんの人の良さそうな部分が生かされているし、大野先生の演出はスピーディーだし、パッと見る分にはそれほど悪くはないと思います。なんつっても今年は「1914」があったから。アレに比べればどんな作品も相対的に良く見えますわ。サエちゃんは、袖(袂)の捌きも良くないし、エピローグの仰向けに伏せっている→立ち上がる、を、いかにも考えなくやっていて、これをうまくやれば「青春」あるいは「国を思う情熱」は「永遠である」みたいなことが表せるのになあ、と思いますが、それがサエちゃんと言えばサエちゃんなので。ああ、私、サエちゃんに関してえらくハードルが低いわね。慣れって怖いわ。

 くらりんは、かなりノビノビ演じていますね。サエちゃんとのコンビも3回目なので息も合っています。リカちゃんと一緒に演じるのは苦労が多かったんだろうなあ。その緊張感も好きではあったんですが。背丈・体格・演技の質(と言うのか、方向性と言うのか、温度と言うのか)も二人並ぶとバランスが良く、1作で終わるのが勿体ないです。
 役代わり同期3人。今回は鎌足かしげ・軽皇子あさこ・石川麻呂ユウヒ、でした。かしげは時々そこはかとなく品の良さが出てしまい、下級の立場からのし上がったにしては・・・と思う部分もありましたが、それでも作品のキーポイントになっていたと思います。あさこは正常なオットーというか。皇族(貴族)的な雰囲気が良く出ていました。ユウヒはなかなか男らしくなったかな。ちずさんとのラブシーンも自然でした。んんんんん〜、でも、やっぱりベストは、鎌足あさこ・軽皇子かしげ・石川麻呂ユウヒなんだろうな。東京はこのキャスティングで見たいです。
 ゆらさんは皇極帝。歌はちょいと置いといて、貫禄と同時に女性の弱い(いや、嫉妬か?)部分も出ていて大変素晴らしかったと思います。専科並の貫禄に、トップさんとのラブシーン有り、って結構難しそう。宙組ならタキちゃんで、タカコさんとのラブシーン有りともなれば大ブーイングでしょうが、サエ&ゆらにはそんな気持ちが沸かないのは何故でしょう?ちずさんは軽皇子の妻にして石川麻呂のかつての恋人。確かにもう少し若手(あーちゃんとか)に振ってもいい役かもしれない。けど、私はちずさんの演技が好きなので、この配役は嬉しいっす。あと目立っていたのがのぞみちゃん(山背)。プライドが高くて屈折して、ってのが良く出ていました。演技うまい子なので、もうちょっと使って欲しいなあ。ほっくんは鞍作の私的ガードマン。ちなみにその兄は蝦夷の私的ガードマンの越リュウ。ほっくんはうまいんだけど、もうちょっと何かあればいいんだけどなあ。笑いをもう少し自然に取れないかなあ。娘役陣はあまり目立たず、かな。みゆちゃんは女官など。結構わかったわ。マギーちゃんは台詞有り。みゆちゃんの同期のひまりちゃんも初台詞?あ、あと、マチオ!出番も台詞もたくさんあるの!でもカンチガイ演技じゃないの!嬉しいような、つまらないような・・・。あとは彩那音ちゃんの美しさが印象に残りました。さすが兄弟!いや姉妹か。

 で、ショー。星組で見たときはつまらなかったのに、月組は面白かった。午後の部を見るかどうかは、午前の部を見てから決めることになっていたのですが、午前の部終演後すぐチケットセンターに行っちゃったのは、ショーが良かったから、楽しかったから。
 月組の方が良かったのは、星組よりラテンが合っていること、トップコンビを始め組子全体のイメージが幼めなこと(星組はアダルトなので、こういう夢夢しいのが似合わないのかも)、そして、なによりアサコです。出てくるだけでラテンなアサコがいたからこそ、ショーのイメージも一気にラテンになったのかもしれません。星組はここがタニだったからなあ。弱いよね、そりゃ。あと、サエちゃん、音程はアレでも、歌詞は聴き取れるから。ワタル君はハートは伝わるけど、細かい歌詞は聴き取れないので、そういった意味で月組の方がわかりやすかったかも。マリアも、檀ちゃんよりくらりんの方が歌は聴き取りやすいし。御崎先生の荒い指揮も、この作品には合っているかも。
 ま、とにかくアサコ全開です。やばいっすよ。アサコを見ると、脳味噌が溶け出すのがわかります。ジュワーーーーと液化するような気がするのです。もう、総スパン膝下ビラビラのズボン(パンツ、なんてオシャレなものではない)が似合うのなんのって!!あと、蛇の場面との差し替え場面、サエ、かしげ、アサコが並んで踊っていますが、
一人だけ、
背広の裏の見せ方が違う!

う〜ん、このハッタリがイカスぜ!男役を率いて踊るところも絵になっていますね。回転もきっちりしているし、キメどころがウマくなっていると思います。アサコには花組トップをオサから継承して欲しかったんだけど、このまま月組でもいいんじゃない?とちょい思ったり。同期のユウヒの扱いが微妙になりそうだけど。
 かしげも星組の時より生き生きしていました。特出も慣れてきたかな。そいで、ゆら&エリ!ああ、これがなければ!!ゆらさんも全開です。芝居の女帝でシリアスな分、こちらでは弾けまくり。エリちゃんは毎回違うアドリブが期待できそう。これを聞きたくて通ったりしちゃうのよね〜。
 みゆちゃんの出番も殆ど把握できたと思います。上手よりが多いかな?ロケットは、いつもは下手端の方なんだけど、今回は真ん中よりちょっと上手の位置です。見やすくていいわ。


 ところで。今回のムラ行きの目的は、サエちゃんのお披露目でも、ラテンなあさこでもなく、プチ・ミュージアムの「薔薇の封印」の展示物でした。記録は→ こちら ←。リカちゃんの衣装を見るため飛行機に乗ったのでした。有村先生のデザイン画が美しすぎ!!