月組(宝塚大劇場)「エリザベート」
■2005/02/04

 いろいろ不安要素があった月組エリザですが、ワタシ的にはOK!ってカンジです。雪組好きな人はダメかも。星組好きなら大丈夫だと思います。初日なんで、まだまだな部分もありますが、これから芝居が深くなっていけば、なかなか面白い作品になるのではないでしょうか。以下個別に。
 演出の変更点はそれほどありません。中村Bよりは小池色が強いと思います。「ミルク」でトート+群集が銀橋に出ました。Dr.の診察で盆が回り、椅子に乗って立ち上がったトートが真正面に来ました。ヴィンディッシュの小道具はショール。それくらいかな?衣装は新調多し。全体的に豪華になっていました。ショーは、ガイチ(深い紺色の衣装)、ロケット(花組と同じ)の後は、濃い目の紫衣装のトートとラベンダー色(ピンクがかった薄紫)のドレスの淑女。歌は「天使の歌は〜」から始まる「最後のダンス」。その後男役群舞。こちらも上着はラベンダー。踊り自体は星組版。ガイチがゼロ番です。それから白い衣装にに着替えたさえちゃんが階段から降りてきます。ガイチ・キリヤン・ゆうひが階段に上がり、ちょっと引継ぎダンス。3人が捌け、せり上がりで灰白色のドレスのあさこ登場(背中が美しかった!)。「私が踊るとき」をタンゴ調(ボレロ調?)で。一応リフトあり。あさこは途中でカツラがずれたのか、しきりに頭に手をあてていました。
 さえちゃんは自信たっぷりな黄泉の帝王。その自信はどこから来ているんだ〜、みたいな。根拠のない自信、それこそが黄泉の帝王か。彼女の、良い意味での「不動」の部分がとても生かされていると思います。ビジュアルも文句無くよろしい。黒天使をバックにすると、ものすごく舞台映えがします。身体も絞れているようで、白い衣装もスッキリ。カツラもセンスが良いと思います。モップ犬と呼ばれた頃が嘘のようです。芝居も、新公でやっただけあり、初日からなりきっていましたよ。このまま進化すれば、良い主役となるでしょう。歌も心配したほどではなく。役に入り込んでいるので、台詞代わりの歌はOKだと思います。ただ、「最後のダンス」と「闇が広がる」は、純粋に「歌を聴かせる」部分なので、このあたりになると一気にテンションが下がっちゃいますね。それが今後の課題でしょう。衣装はどれも良く似合っています。ちゃんと眉毛もありましたよ。
 あさこは、ビジュアルは良いです。結構女の子らしかった。さえちゃんの前ではか弱い女性だった。でも、生命力に溢れているというか。まだ彼女の「エリザベート」は作りきれていないと思うので、今後変わっていくのでしょうが、今日見たカンジでは、とにかくエネルギッシュ、っていうのかな。それがゆえに、その熱が「生」に向けられたときと、「死」に向けられたときの振幅が激しすぎるのかな、と。そこに一種の狂気が隠れているような気がしました。歌は意外に良かったよ。高い声も出ていました。ブレスが激しいのが気になるけど。問題は歌より、台詞を言っているときの声がまだ安定していないかな。時々オカマ。1幕より、2幕のほうがいいかな。「鏡の間」では拍手がおこりました。「とにかく、よくやったよ!!」と、お客さんすべてが思ったのではないでしょうか。
 ガイチ!ありがたや!!あなたを月組の舞台で見られるだけでも嬉しいのに、フランツが似合いまくりだよ。ヒゲが合うんだよ、これが。このオヤジくささがいいのだよ。ああ、ああ、好きよ〜。
 キリヤンのルキーニはトドさん系。個人的にはもう少し「狂気」が欲しいところだけど、まあ、いいっす。ヒゲが似合って、男臭くなって帰ってきました。歌はバッチリです。
 ゆうひのルドルフ。「闇が広がる」はさえちゃんと声質とあまり合わないのでイマイチ。その後からは良いです。ぶんちゃん系の繊細ルドルフかと思ったら、どちらかといえばタータン系の「皇太子」でした。
 さららんは、ヒゲが・・・。るいるいは低い歌声が迫力があります。越リュウ、カッコイイ。ちずさんのゾフィーは、歌はバッチリなんですが、いかんせん「前」がハッチさんだったんで、ちょいと迫力が物足りない。マデレーネのあいあい、さすがに脚が綺麗だ。たまこのヴィンディッシュは、まだまだ作りこむ余地あり。頑張れ。あーちゃんのヘレネ、可愛かったです。
 みゆちゃんがね、結構出番があってね。親戚が集まったときには「見て〜、シシィが木に登っているわ」の台詞あり。もしかして初台詞?結婚式では上手Wトリオ真ん中。カフェでは茶色っぽい衣装。ミルクでは茶色の帽子?で上半身は白い長袖に黒の半袖のアンサンブル+青いスカート。キツイ顔で迫力あり。そして!精神病院ではヴィンデッシュの侍女。大きい役だわ!!パレードは上手のWトリオでした。

 そんなわけで、期待以上の「エリザベート」でした。明日も楽しみ。19日も楽しみ。ただ、ギターがやっぱりヤバかった。もうちょっとなんとかしてほしかったですわ。


■2005/02/05
 エリザ2回目です。昨日よりずっと良くなっていました。昨日はね〜、とにかく報道陣が凄かったモンね。音楽がない場面だと、シャッターを切る音がシャカシャカシャカシャカうるさかったもん。
 今日は「♪最悪の事態に陥ってしまったんだ〜」でちょっと眠くなっちゃった。悪いから、じゃなくて、その逆。だって、観るだけとはいっても、こちらも初日前から緊張していたんだもん。2月3日の夜なんてあまり眠れなかったんだもん。初日は、とにかく無事に終わったな、と。初日より一般の(って私も一般だけどさ)客が多くなる2回目も、手に汗を握りっぱなし。で、「闇が広がる」が終わったあたりで、もう大丈夫、月組らしい、月組ならではのエリザがこれからできていくのね〜、と、ようやく肩の荷が降りたっちゅうか、緊張が弛んできたため睡魔来襲。寝なかったけどね。そんなこんなで、まだ各人の演技がどうこう、と言えるまで観ていません。とにかく「さえちゃんの歌はOKだったぞ」とか、そんなレベル。その中で言えるのは、月組エリザの特色は、やっぱ群衆芝居、ってことかな。アンサンブルに生命力があります。ただのモブ、じゃなくて、ちゃんとその時代に生きている人々になっていると思います。
 さえ&あさは、ある意味「子供っぽい」というか。ひたすら「お前が好きーーー」と言い続けるトートと、「イヤ、イヤ、イヤ〜〜」と叫び続けるエリザベート。まるで幼稚園児の喧嘩です。繊細さなんかありません。エリザから感じられるのは「狂気」というより、「尋常ではない」みたいな。でも、それもアリかな〜、と。とにかくさえちゃんのトートがこれなら、まともな娘役の芝居では合いません。まっとうにエリザを作っちゃったら浮いちゃうでしょう。そういった意味では「割れ鍋に綴じ蓋」な二人です。って、これがエリザの感想なのか!!!!私は月組が好きなので、これでOKなのですが、純粋な「エリザ」ファンはなんと思うか・・・。それを考えると、ちょっと怖いわ(笑)
 私はこれまで宝塚のエリザは1度だけ1階8列あたりのセンターで観た以外は2階席で観てまして。今回初めて1階後方席で観ました。この辺りだと群舞が実に綺麗です。舞台も人口密度が高く見えます。東京もこの辺りで観られるといいなあ。


■2005/02/19
 これで月組版は3回目。トートが主役の宝塚版としての評価はともかく、私はこの月組版は割と好きです。5組に順位なんてつけられない。これ好き。今回は男役が演じたことにより、とても強いエリザベートでした。1日に8時間、確かに歩きそうな。「旅を続けて」の「旅」が本当に各地渡り歩いたと実感できるような。マデイラ島なんて当時のヨーロッパ王族から見たら地の果てだもんね。そこを始めに世界を「放浪」しているエリザベート。実に生々しい「存在」をあさこから感じました。その「強さ」は私が抱いていた史実の彼女のイメージとかなり重なるので、私は非常に好みです。そして、最後。トートに抱かれ、トートの肩に顔を傾けた時。私は「彼女の命が絶えた」と、「死んだんだ」と思いました。このようなことは過去4組には感じませんでした。星組や花組の時ですら昇天の場面は、「自分が選んだ道(新しい世界)」を「選び取り」「旅立っていった」と思えたのに、今回は「彼女の存在がこの世から消えた」と感じられました。そして、実際には観ていないけど、いろいろなレポートから、ウィーン版を「トートは、エリザベートが持っている死の願望(←宗教上自殺できないんで)であり、自分の中に存在する幻影(つまりスカIIなのよ)」と思っている私にとって、これは「ミュージカル・エリザベート」としては、とても正しい姿だと思えました。私があさこファンのせいもありますが、エリザベートの視点で物語が見えました。今までとは違う感動を味わえて大変幸せです。
 かといってトートのサエちゃんがダメなワケじゃなく。彼女がまぎれもない『死』であったこそ完成した作品だと思います。死神でもなく帝王でもなく悪意でもなく。「インレの黒うさぎ」みたいな、誰の所にも訪れる『死』。「生きたお前に愛されたい=生きているお前は『死』を愛している」とでも言うのかなあ。うまく言えないや。その、独特な存在感が良いと思います。ガイチは歌声で若造、母の助言を聞き入れる皇帝、継承を憂慮する家長など、場面ごとに演じ分けていました。さすがです。キリヤンもだいぶ狂気が増しました。もう少し話に入ってくれると個人的には好み。でもって、のぞみちゃんと越リュウが目を引くんだよねえ。好きじゃよ。


月組エリザベートの衣装は → コチラ