雪組(東京宝塚劇場)「エリザベート」
■2007/07/12(木)
 大変申し訳ないけれど、ハッキリ書こう。つまらなかった。宝塚版の「エリザベート」は大好きなんだけど、今回はつまらなかった。2巡目だから、ではないと思う。
 まず演出面。ものすごく平坦だった。イケコが演出だと思うけど、中村Bじゃないかと思うくらい。「エリザベート」そのものではない。「エリザベート」をなぞっているだけで、実がない。
 歌唱面もとっても弱い。物量大作戦こそ宝塚なのに、コーラスの音量がない。パワーもない。1階後方席の音響のせいなのだろうか。迫力がなかった。役者さんの年齢が若めのせいか、歌声が全体的に若めの女の子声で、それもなんだかなー、だった。美穂さんなど、歌える人のマイクは絞ってあるのか?ダンスもいまいちピシッと揃わないんだなあ。
 最大の問題点は、となみがシシィを作り上げられなかったことだ。「白羽ゆり」という役者が舞台に立って、歌って、台詞を喋っているに過ぎない。なにをやっても××、のような、役者の個性が役をはみ出したのではなく、役としてはなにもないから、役者の地が見えてしまっている、ただそれだけだった。顔が丸いかも、なんて心配まではとうてい到達しない。なんなんだ、この虚しさは。植田モノのような定型芝居ならよくても、このテの芝居はダメなのか。アントワネットとシシィは違うのだよ。時の流れもまったく感じられない。シシィはなにから逃げていたのか。それよりも、逃げていることさえ感じさせない。大劇場の初日ならともかく、東京公演だよ。これをOKした演出家も演出家だ。エリザをあてた企画の時点で問題だったのか?
 ミズのトートはビジュアルは良いのだが、すでに喉がダメになっている。「大海賊」のリカちゃんを思いだした。音がハズれるとか、そんなことは言ってられない。ソロを歌い終わると、「どうにか乗り切ったな」としか思えないので、トートに見えないんだな。喉だけではなく、鼻もなのか?風邪なのか?歌唱面で大幅にパワーダウンなので、トップとしての求心力がない。トップ仕様の宝塚版だから、トートに求心力がないと、芝居としてのパワーも無くなる。見ていてとっても辛かった。歌い上げるナンバーでないところとか、芝居自体は悪くないので、トップとしての資質は充分だと思う。しかし、それにしても、彼女の喉にトートは厳しかったのではないか。東京は開けたばかりなのに、8月まで保つのかしら?
 ユミコは、私の好みとしては、オヤジをやるにしても声が高いんだよね。歌自体には、経年は感じられなかった。ただルドルフ葬儀の場面から湖畔はとっても良かった。シシィへの愛情が切なかった。
 キムのルキーニは・・・・・・・。予想以上によくやっていると思う。ヒゲも似合っている。ただ、これもたんなる私の好みだけれど、もう一歩、役に踏み込んで欲しかった。やっぱり、「キムがルキーニを演じているな」って部分が出過ぎていて、「ルキーニ」ではないんだなあ。
 逆に、テルのルドルフは、歌がかなりアレなんだけど、役としてはよく作っていたと思う。ミズとの「闇が広がる」は良かった。
 エルマーはひろみちゃん。だいぶ男くさくなってきた。ショーではカッコつけていたな。いづるんのヴィンディッシュからは全くと言っていいほど狂気は感じられなかった。たんにメンチ切っているだけだった。ヒロさんのツェップスは勿体ないなあ。でも溶け込んでいたわ。
 ハマコのゾフィー。個人的には、もっともっとやっちゃってーーーーっっ!と思わなくもないけれど、やりすぎずないリアルな皇太后陛下で良かったんではないでしょうか。ソプラノも綺麗でした。
 今回ほど、一本もの芝居にもショーが付いていることを感謝したことはない。ショー部分がなかったら、かなーーーーーーり辛い気持ちで劇場を出なければならなかったでしょうな。前半は白、後半は黒地に深緑。色合いはステキだった。デュエットダンスもとっても良かった。
 2週間後に、もう1回見る予定だけど、どうなっているかなあ。ミズの喉は回復するかしら。でも、となみのシシィは進歩しそうにないなあ。むーーーー。

 あと、指揮が西野先生だったんだけど、ゆっくりめの演奏だった。台詞部分がとっても早く感じた。このアンバランスさも、乗り切れない理由だったのかな。佐々田先生や伊沢先生ぐらい音楽性豊かに、とは言わないけれど、テンポがどうも違う気が。いっそ御崎先生で走るぐらいの方が良かったかもなあ。
*そのゆっくりめの音にも、乗り遅れがちのとなみだったなあ。

 今日のお客様は、ずんこさんとワタルくんでした。私の席からは見えなかったけど。

 やっぱり、アレだな。
トートは
音程ではなく
声量

ですな。
音程がヤバヤバのマリコさんやサエちゃんも
トートとしての迫力はあったよなあ・・・