「新版・四谷怪談 左眼の恋」(演出:荻田浩一)」
■2002/09/02 (月)

 荻田先生、スゴイ、エライ。3時間全然退屈することなく見れました。大劇場の芝居も書ければ小劇場の芝居も書けるのね。濃密な時間でした。
 江戸時代、女性だけがかかる左目の病があった。 → だから普通の人は左目を隠して右目で物を見る。でも、お岩は患った目を伊右衛門に覗き込まれる。お岩の醜さを嫌う余り、お岩を正視すること無かった伊右衛門が初めてお岩を見る、お岩と見つめ合う。お岩初めて伊右衛門と見つめ合う。だから左目の恋。顔が爛れても左目だけは失いたくないと思ったお岩。今まで従うことしかなく、自分の意志を持たなかった女が初めて愛と憎しみを持つ。伊右衛門がお岩を斬るところはわかっていても辛く切なかった。

わたしは醜い。
きっとこの世の誰よりも醜い。
顔が醜い。からだが醜い。心が醜い。
(中略)
わたしの左目が恋をした。
見てはならないものを見た。


 三恵ちゃんは最初はイマイチだと思った。声がウェットじゃないのよね。ドライというか。だから日本物にはちょいと似合わないと思った。しかし2幕の殺されるあたりは、泣きそうになってしまった。裏切られた、それだけの恨みじゃなく、もっといろんな感情が押し寄せているのがわかった。戸田朱美さんは、演技だけ見ると、小劇場一筋何十年、ってカンジだけど、ヅカだった。フィガロにも出て立ってことは最近の退団だよね。実にうまい人でした。特筆すべきはオトコ!オトコって在団中は、ダンスは印象に残っても演技が印象に残ることはなかった。でも、いい!実にいい!!!うまくて存在感がある役者になっていました。ものすごく色っぽくて徒っぽい。声も作らなくてよくなったせいか、通りの良い声だ。

 どう書いても、うまく書けないわ。とにかく荻田さんの舞台はいい。センスがいい。台詞も綺麗だけど「四谷怪談」で音楽をブルース・ジャズ(生演奏)にするとは!斬り合いのBGMがジャズアレンジの「センチメンタル・ジャーニー」なのよ。早く大劇場で芝居書いてね。