宙組(東京宝塚劇場)「炎にくちづけを/ネオ・ヴォヤージュ」宝塚宙組」
■2005/10/27(木)
 芝居はオペラ「イル・トロヴァトーレ」を下敷きにした物語。女官レオノーラは、吟遊詩人マンリーコを愛しているが、そんな彼女にルーナ伯爵は横恋慕。マンリーコをジプシーと蔑み殺そうとする。傷つき母・アズチューナに介抱されるマンリーコは、母から秘密を打ち明けられる。ルーナ伯爵の父によって、自分の母・マンリーコの祖母は火刑に処せられた。復讐のため先代伯爵の息子、現在のルーナ伯爵の弟を掠って焼き殺したが、暗闇だったため自分の子と間違えていて燃やしてしまった(そんなコトって、あり?)。自分の母と子供のために、伯爵(実の兄)に復讐しろと言う母の言葉に頷くマンリーコ。
 一方、マンリーコは殺されたと聞かされたレオノーラは修道女になる決意をしていた。が、マンリーコが現れ、二人で消え、暗転後のレオノーラは毛布一枚を体に巻きつけただけの姿で「♪結婚前に結ばれると思わなかったけど〜、しあわせ〜〜」みたいな歌を歌う(ひーーーー)。
 それから三ヶ月後。♪私はずっと嫉妬の炎を燃やしていた〜、と歌うルーナ伯爵は、マンリーコとアズチューナを捕らえ(マンリーコはいつ捕まったんだ?)火刑にすると発表。レオノーラは伯爵に取引を持ちかける。牢獄に現れ牢の鍵を持ち逃げ道を教えるレオノーラに、怒るマンリーコ(鍵を投げ捨てるところがメチャクチャかっこいいのだ!)。しかしレオノーラは伯爵のモノにならないために、すでに毒薬を飲んでいたのだ。マンリーコの腕の中で死ぬレオノーラ。翌朝、火あぶりにされるマンリーコの姿にアズチューナはルーナ伯爵に叫ぶ。彼はおまえの弟だと。伯爵ガビーン!そのままマンリーコ以外ストップモーション。マンリーコはジーザスのポーズで幕。
 愛の物語、という点では、ファンは大泣きのようです。私はファンじゃないので泣きませんが。問題は、タニ以下のジプシーが、非キリスト教徒ということで蔑まされ、あげくに一人づつ殺されていくところです。キリスト教徒(イメージはアメリカ)対非キリスト教徒の図式がしつこいぐらい示されるのには、もう、うんざり。なんで金を払ってキムシンの説教を聴かねばならんのだろうか。勘弁して欲しいよ。主演のファンならラブ・ストーリーの方にのみ集中できるんだろうけどさ。私は嫌いだね。
 んで、キムシン(と甲斐先生)は、新作オペラを作りたいんだろうか、なんて思ったり。一つの団体が新作を作るのって、それはそれは大変なこと。金にしても、なんにしても。それを軽々とやっちゃうのが宝塚なんだよなあ、と。その体制には感動した。内容的に失敗したとしても、「キムシン、ご勘弁〜」って言われて終わりで、興行的な失敗は、まず無い。それが可能な団体って他にはないよな〜。しかもこれだけ人数を使えて。だからこういうオペラ物を作りたいんだろうなあ、と、理解はできるけど、そろそろ路線を替えて欲しい。次は月組だし。また説教系になるのかな。かと言って「愛のソナタ」系もご勘弁だよな〜。
 ショーは三木先生の定番ジャズ物。目新しさは殆ど無いけど、黒燕尾があるから、まあ、いいや。最近話題の「ピアノマン」ネタもありました。記憶を無くした男(タニ)が、いろんな音楽を聴いて記憶を呼び覚まそうとするの。いろんな音楽が「白鳥」の3幕みたいなイメージでした。

 
 次作で退団が決定したたかこさん。今まで、コスプレ衣装が見栄えする人ってイメージでしたが(そのためだけに金を払ってもイイと思ってます。そして払ってきました。)、牢獄の鍵を投げ捨てるところで、初めて「男臭さ」を感じました。素敵・・・。
 ハナちゃんは、堂々のヒロイン振り。ソロも長いし、見せ場も多い。純情可憐なお嬢様。女官だけど。キムシンにとって、ハナちゃんはミューズなのだろうな。
 ガイチは、、、。最後ぐらいは恋愛が成就する役をさせてあげたかったなあ。豪華な衣装で良かったけど。ガイチの歌声を聞けなくなるのが寂しいなあ。
 タニは、芝居においては、歌いそうになるたび「あ〜、やめて、歌わないで〜」と、心の中で呟いてました。歌い出せば「やっぱりタニよね・・・。どうにかならんかなあ。でもこの破壊力が魔化魍退治に必要なんだし・・・」と思ったり。しかし、ショーのジャズは悪くないと思う。アップテンポの曲をあてがえば、なんとか誤魔化せそうだ。ビジュアルはイイと思う。赤い衣装の時は目を引くよね。芝居でも胸元を大きく開けていましたね〜。すっかり大人っぽくなっちゃって。
 あひるも活躍中。階段降り一人だったし。スッシーの黒燕尾には惚れるね。るいるいは、浮いちゃいないが、やっぱ、もう、「お姉さん」だねえ。


■2005/11/08(火)
 自分が行けそうな日の中で最も千秋楽に近い日、という理由で本日公演を友会でエントリーして当たったのですが、たいへんラッキーなことに
 ・友会優先公演だった(終演後ご挨拶があった)
 ・ガイチさんの誕生日だった
 ・ハナちゃんの退団が公式発表された日だった
と、トリプルにスペシャルな日でした。ルグリの「オネーギン」初日と被っていたので、キムシンの説教は1回でいいんだけどなあ〜、ガイチの退団公演じゃなきゃ売り払ってルグリを2回見るのにな〜、と、渋々行ったわりには、いろいろ楽しんできましたわ。

 芝居の方は、トップの同時退団が発表されたせいか、前見たときより主役2人のラブラブ度が数倍アップしているように思えました。キムシンの説教も来る場所がわかっているので、そこだけ魂を飛ばしてやり過ごしましたよ。どーでもいいんですが、ジプシーは「非キリスト」であって、「反キリスト」では無いように思うんですがね。まあ、キムシンだから仕方がないか。
 主役2人のラブラブ度があがったので、ルーナ伯爵が、なお不明な人物に。役者的にでなく、脚本的にね。最後までレオノーラを愛しているかどうか、あんまりわからないんだよね。三ヶ月「嫉妬の炎」を燃やし続けてきたようだけど、どっちかというと、女を取られた、という、プライドを傷つけられた方を恨んでいるように思えるんですが。レオノーラが死んでも、「やっぱり裏切ったか」で終わりだし。原作ではともかく、ヅカ的には、「なんで、お前が死ぬのだ〜」ぐらい嘆いてもよいのではないかな。その辺り、一貫性がない。脚本・演出的に。他の男のモノになった時点で興味を失ったのかな。
 あと、「やっぱり裏切ったか」って、もとからそう思っているのなら、「あいつが逃げたら約束を守れよ」って言うのも不思議な気がする。
私なら先に
ヤッちゃうよなあ

ねえ?
宗教問題より三角関係の方こそ描き込むべきじゃあないのかなあ。もしかして、
 ・ジプシーと寝た女など汚らわしいだけ
 ・取引を持ちかければ、女は自殺するだろう
 ・それを見たマンリーコは絶望するだろう
って気持ちを汲み取るべき?より、マンリーコを虐めるっていうのか。でも、そうなると、ますます、女を手に入れたい、ではなく、自分のプライドを傷つけた男への復讐だよねえ。

 もうひとつ謎なのが、レオノーラって、ルーナ伯爵の宮殿の女官なんだよね?主人に対して対等な気がするのは気のせい?「女官の女官」のるいるりも派手だよねえ。

 タニの胸開きは相変わらず。だんだん男らしくなっていくねえ。黒衣装のスッシーがス・テ・キ! 修道院長の毬穂さんは、最初は邦なつきさん?と思っちゃいました。すいません。でも貫禄のある声・演技は、なかなか良かったですよ。若手は、あひるとマヨマヨ以外はあんまり区別がつきません。すいません。

 ショーは、まあ、やっぱり・・・。耳タコな曲ばっかり。たとえお気に入りでも、(自分のショーで)一度使った曲は3年間は使用禁止にしてくれないかなあ。衣装も着回しなんだから、音楽ぐらい目新しくしてくれ。新曲作れとは言わないけど、いつもいつもいつもいつも同じジャズじゃ飽きちゃうよ。でも中村Bの総踊り大会よりは好きだけどね。黒エンビのスッシーの襟足が好きだわ。
  
 退団発表した、というのが念頭にあったせいでしょうか。ハナ・タニが組むところが、「結婚したキャリアの女性を閑職に回して自主退職へ追い込む」に、ちょっと見えちゃったりして。某社のスチュワーデスさんが結婚したとたん系列ホテル内のベーカリーでパンを販売する仕事に回された、という、10年ぐらい前に読んだ記事を思い出しました。(注:ハナちゃんが寿退団ということではなく、嫌がらせを受けて自主退職させるパターンを思い出したという意味です)
 
 
出待ち。
ガイチの誕生日ってコトで、会の人が一輪のピンクの薔薇を手渡し。
全員から、一人一人丁寧に受け取るガイチさんでした。
会の人が声を揃えて「愛してま〜す」って言うと
すごく嬉しそうに微笑んで、投げキッスをしましたよ。
キレイ、って言うより、可愛いってカンジっす。

ハナちゃんの出も見ました。初めて見ました。
私はガイチの会の後ろあたりに立っていたので
ハナちゃんが自分の会のところで泣いていた、というのは
確認できませんでしたが
ちょっとお疲れっていうか、意気消沈っていうか
そんな雰囲気でした。
細いですよね。
厚みが全然無いです。
この身体で真ん中に立ち続けていたんだから
エライもんです。


■2005/11/13(日)
ガイチお見送り

 市川から有楽町へ。終演1時間前を目指して行ったら、楽屋口前あたりで一般列最前列を取れました。感覚的に1時間ちょいで終演で、退団者が出てくるのはそれからしばらく、とか思っていたのですが、よくよく考えると、約3時間半待ちでした。友人と話しているとあっという間なんだけね。

 退団者4名が出てきた後、ガイチが出てきたのは21時頃。私達がいた場所では笑顔、だったのですが、車の前あたりでは泣いていたのかな?白い布で顔を拭いているように見えましたし、その後、手を振ったときも、白い布を手に持っていました。何度も何度も、大きく手を振ってくれました。

 ガイチの思い出は・・・。名前をいつ知ったのかは、もうわかりません。ただ組替えの時に、花組ファンの友人が、「ガイチを持って行かれた!!!」と嘆いていたのを聞いて、あ〜、あの人が行っちゃうんだ〜〜、と思ったので、その前には名前はチェック済みだったのでしょうね。役としての最初の記憶は、WSSのリフです。幕が開いた瞬間、板付きのガイチを見て、ああ、こういう真ん中が似合うようになったんだな〜、と、ちょっと感動した記憶があります。
 その後は「螺旋のオルフェ」のロジェ。 
  ♪ 季節はめぐって〜 命を育む 緩やかに時は過ぎ
ここが好きでした。暗い戦争時代から、セットが回って、太陽の季節がパリに来た。それを銀橋を渡りながら歌うガイチ自身が、暖かな春風のようで、舞台の雰囲気を一転させていたのが印象深いです。
 あ、その前にシバーブリンがあったわ。♪ しょせん おぼっちゃま〜〜 が好きなの!ニコライが、自分がマーシャについて書いた詩をシバーブリンが笑ったって怒ってたけど、そりゃ、誰でも笑うよ!と思ったよ。
 で、「LUNA/BMB」で役替わり+2番手(ポスター入り)があって、新専科に移動して。いろいろあった後に、単独コンサートの「愛・舞・魅」。これは本人的にもそうだったと思うのですが、見る側も「背水の陣」的雰囲気があったように思います。ここでガイチさんの実力、に加えて人気(動員力)を示さないと、次がないかもしれない、と思った人も多かったのではないでしょうか。そのせいか、私が行った日も7〜8割の入りでした。会場となったアートスフィアでは、完売しない芝居もあるというのに、ほぼガイチ目当ての人だけで、これだけ埋めた、というのは、良い実績になったのではないでしょうか。日記等にも書きましたが、私がガイチの魅力を再認識したコンサートでもありました。それまでは、ガイチって無色透明で暖かいけど地味な人、って思っていました。でも男性ダンサーを従えても充分濃くてクドくて。ああ、「男役なんだ」って思いました。この、彼女の一番の魅力は、宝塚にいてこそ発揮できる部分だから、なるべく長く宝塚にいて欲しいなあ、と思ったものですわ。
 その後も新専科としていろいろな作品に出演して。フランツ役が来たわけですな。私はフランツはシシィを深く深く愛しいる、と思っていたので、ガイチの、シシィへの気持ちはクリティカル・ヒットでした。自分の義務は義務としてちゃんと認識しつつも、放浪を続ける妻を愛おしく思っているのが、ものすごく伝わってきました。鏡の間の「♪ 君の 手紙〜」の「き」だけで泣けてきましたよ〜。

 と、いろいろ走馬燈のように浮かんできましたよ。DSの後は、まだ決まっていないのか、発表されていないのかはわからないれど、今後のガイチの人生に、幸が多いことを祈ります。