「眠らない音」
■2005/10/15(土)
 一人の詩人がいる。詩を書くために、世に耳を傾けていたら、あらゆること、聞きたくもない雑音まで聞こえるようになってしまったため、時計塔に籠もり耳を塞いでいる。ある夜、月が彼に語りかけてきた。世界の、名も無き人々の物語を・・・。

 詩人がずんこさん、月が岡さん。詩人の心象風景を表すダンサーが森山開次さん。月が語る、あるいは詩人が語る世界の物語を、歌で・芝居で・踊りで表すのが、藤林美沙さん、石川ちひろさん、伊藤明賢さん、附田政信さん、そして、詩人&月と、物語を繋げる吟遊詩人のような語り部のような役に龍之介さん。オムニバス形式の話は、アンデルセンの「絵のない絵本」より。曲は主に、「チャイコフスキーー交響曲5番」など、クラシックの曲に日本語の歌詞をつけたもの。

 全体的に、やりたいことは、すごーーーーーく、よくわかるのですが、まだ形になりきっていないようなカンジを受けました。特に第一部は、物語と歌詞と曲があんまり合っていないような。歌詞が音に対して忙しすぎて、歌詞を頭で追っていると、目の前の物語についていけない。また、物語のテンションと、曲のテンションが合っていない。ので、イマイチ、話に入り込めない。2幕はクラシックだけでなく、アップテンポの曲があったので、いくらか見やすかったけど。

 あと、人が少ないかなあ。もう少し、例えば馬とか雪とかの人数が多ければ舞台映えしたと思うんだけど。ちょっとスカスカでした。この4人がこう着替えてこう出てきて、みたいに思えるので、衣装は替わっても、話がガラリと変わって、とは思いにくいのですわ。

 もうちょっと、構成を練るとか、演出を練るとかすると面白かったかも。会話も遊眠社廉価版というかトミノ系みたいで、少々古くさい。フィナーレも長い。長すぎる。ずんこさんファンには嬉しいだろうけど。

 ずんこさんは「さばくろ」以来。ダンスが上手!というイメージは全然なかったんだけど、動きにとっても華がありました。森山さんが後ろで踊っていても、ずんこさんのちょっとした動きに目が行ってしまうの。さすが元トップ。背が高いのでいろんな衣装が似合います。最後の布たくさんの衣装も、決して衣装負けしません。脚も長いよね〜。こんな彼女にもラッキーを履かせるんだから、宝塚のビジュアルへのこだわりって半端じゃないよね。歌は、高音は、まあ普通。低音は迫力。男役声ではなく、ちゃんと女声のアルトでした。素はあんなにホワホワしているのに、舞台では別人だよねえ。
 お目当ての岡さんの「月」。ほーほーほーーーー。衣装がすごかった。着るのが大変そうと思ったけど、早替えがあってビックリさ!言葉も女言葉。「手の人」の時よりオカマくさい。歌は素晴らしい。ずんこさんの声質とも合っていて、デュエットは聴き応えがありました。
 森山さんのダンスは、素敵〜〜。クネクネとしたり動物になったり。好き好き〜〜〜。4人のアンサンブルも良かったです。
 ビックリしたのは龍之介さん。2002年6月の 「TOKYO ACOUSTIC NITE 2002 -EARLY SUMMER-」で見ている人だったよ。感想には「まあ、よくいらっしゃるタイプで。目指している先も読める人だった」と書いていました。いや〜、ずんこさんと共演するとは思わなかったよ。人間、先のことなどわからんものだねえ。