「THE BOY FROM OZ」
■2005/06/11(土)
 実在したオーストラリアのミュージシャン、ピーター・アレンの一生を彼のヒット・ナンバーを用いて語るミュージカル。ピーターの名前は知らなくても、劇中の曲を聴くと「これがそうだったのか!」と思い当たることもあるでしょう。幼い頃にダンスを始め、音楽を始め、オーストラリアで人気者となり、ゲイ・スキャンダルから事実上の国外追放で香港に渡りジュディ・ガーランドと出会い、彼女の前座を務めながら彼女の娘ライザ・ミネリと結婚・離婚。ゲイの恋人の協力でアメリカのミュージシャン憧れのナイト・クラブ「コパカバーナ」に立つも、エイズで死ぬ。ってのが粗筋。
 坂本君は両耳にマイクを仕込んでいるせいか、音楽に負けない歌声。迫力があります。ただ台詞が少々聞きづらかったです。もともと説明台詞が多い芝居なので、聞き逃すといきなりの展開。前後でわかりはするけれど。台詞回し自体は良いです。アドリブ(客いじり)もうまく、客席を沸かしていました。ただ、キャラが薄いっていうか、濃くないので、本来ドロドロ〜、としなければならない場面が、じつにあっさり過ぎてしまうのが、ちょっと残念。前半は、彼を振り回す人、ジュディやライザが濃いので、それほど気にならないのですが、後半の恋人グレック役のIZAM君が、演技・歌ともイマイチなこともあって、一番の山場になるべきところが、あまり盛り上がらず終わってしまうのですわ。80年代のエイズ(特に同性愛者間の)の恐怖って、こんなもんじゃないと思うんだよなあ。痩せ衰えたグレッグにスープを飲ませるとか、その皿を投げつけられたとか、言葉だけで、情景が見えづらい。もっともっと、ドロドロしてもイイと思うんだけどなあ。あと、ファンなら感じるんだろうけど、そうでないと、坂本君から「男性」の「性的魅力」ってのを感じないもんで、「ゲイ」だとか「プロデューサーと寝た」とか、そんな言葉を聞いても「ふ〜ん」としか思えないんだなあ。現実感がないのよん。この言葉に、もっと艶めかしさを感じられればなあ。もっと面白かっただろうなあ。リカちゃんとのキスも、IZAM君とのキスも全く生々しさがない。もしかしてジャニーズ・コードとかがあるのかなあ。スミレ・コードより厳しそうだ。
 リカちゃんは、初登場の姿に絶句。若作り・・・いや、若い頃だから仕方がないんだけど。ピーターの乱痴気騒ぎを一喝するところは大迫力。赤いドレスのショー場面は、露出した脚より二の腕の逞しさに見惚れる。オカマになることなく、ちゃんと「女性」でした。ピーターと出会った頃、大スターである母を、愛しつつも、プレッシャーと感じ、母ではなく、母の娘ではなく、自分自身を見て欲しい、という辛さが伝わってきました。だから彼女がピーターを愛し、離婚後も「友人」でありつづけた、というのは、わかる気がしました。ただ、それに対してピーターがどう思っていたのか、ちょいとわからない。「ジュディの仕事を受けるため」なら野心が見えないし。「ゲイ」の彼が「女性」と結婚した理由が見えにくかったなあ。坂本くんビジョンならわかるのかなあ。リカちゃんビジョンだと掴めませんでした。
 鳳さんはさすがの迫力。大スターのオーラ。ピーターの母・今陽子さんは芝居をシメていました。うまいです。IZAM君はねえ、ちょっと力がないねえ。女装で一世を風靡した彼が「ゲイの恋人」を演じるって話題は必要だったと思うけどね。第二幕の芯になるには弱いなあ。台詞を入れただけで精一杯なような。坂本×IZAMではなく、わた×コムなら萌えただろうなあ、なんて思ったりして。
 アンサンブルは歌って踊って迫力抜群。でも、少ないなあ。ロケットが見せ場、って言われていたけど、男性もダルマ着て加わっていたけど、全ツぐらしか人数が居ないんだよね。30人ぐらいはいないとねえ。と別なところを見慣れていると・・・。
 そのロケット。劇中、ピーター・アレンが、「憧れのラジオシティ・ミュージックホールでロケットに参加」って言っていたけど、ラジオ・シティでロケットを踊った人がいるよ、いまの舞台上に、と思ったのは私だけ?(余談ながら。ロケット・チームにラインダンスを振り付けたのはワシリエフの師匠らしい)

 個々人は頑張っているけれど、ちょいと説明不足。コパカバーナやラジオ・シティに出演ってことがミュージシャンにとってどれほど名誉なことか、もうちょっと客席に伝えるべきじゃないかなあ(ここだけは植田氏カモン!)。ピーターが「栄光を掴む」ってのが実感できないんで、それを受けての「死」という終焉の落差が無く、あっさりと人生が過ぎちゃうんだよねえ。役者だけではなく、演出の問題だと思うけど。来週には、もうちょっと濃くなっていることを願います。←あくまでも私の好みだけどね。


■2005/06/19(日)
 前回より面白かったです。坂本君の台詞回しにも慣れたので、(説明)台詞はほぼ聞き取れました。ピーター&ライザ、ピーター&グレッグの関係もわかりやすくなっていました。
 10代のライザは前回よりずっと可愛くなっていました。ライザの「ここから出たい」という気持ちを強く感じるので、「自分にその力があるなら手を貸そう」と、ピーターは思ったのだと感じました。「愛」というより「人助け」。もしかしたら「大スター」ジュディ・ガーランドに「一発喰らわせたい」って気持ちもあったのかなあ、とか。なので、二人が結婚したのも納得というか。イザムも前回より台詞や動作に「役」が入っていました。ピーターの衣装を整えたりの辺りとか。ラブラブ度アップだよね。歌は相変わらずだけどね。
 まあ、個人的な好みとしては、やっぱりもうちょっとドロドロして欲しいけどね。グレッグがスープをぶちまけるっていうところに、「対等でありたいと思っていた相手に憐れまれる口惜しさ」がもうちょっと出ればなあ、と思いました。
 それでも、いい作品だったし、坂本君については賛否両論あるみたいだけど、あまりジャニっぽくないので、単純にミュージカルとして見るには彼が主役で良かったなあ、と思いました。