星組(日本青年館)「龍星」
■2005/10/17(月)
 児玉1回なら巨匠100回、そんなふうに思っていた私がなぜ見に行ったかと言えば、某映画のパ●リだと聞いたことと、トウコちゃんがすごく良いと聞いたから。トウコちゃんに、よくぞ、この役をあててくれた!とファンの人が言っているのを聞いて、なら、言ってみようかな〜、と思ったわけだわ。会社の創立記念日で休みの本日は、まだ定価でチケットを買えたからね。結論は・・・
私は児玉っちを
甘く見すぎていたわ・・・

パ●リならもっとウマく作ってくれよ。。。このネタを使っても、この程度なのね・・・

 中世の中国、宋の時代。皇帝の側室の一人が男子を産む。皇太子が王の器ではないと思っていた皇帝は、新しく生まれた男子に「龍星」と名付け跡継ぎにしようと考えるのだが、嫉妬深い皇后は龍星の命を狙う。宰相の李氏とその夫人は、同じ頃生まれた自分たちの子を龍星と入れ替えることを思いつく。皇后の悋気が治まったとき、真実を告げればよいと。だが、龍星(実は宰相の息子・霧影)は敵対する金国へ、人質として送られる。同じ頃、金の国の烏延将軍は戦災孤児を拾う。子供がもっとも欲しがっていたもの −それは「自分」の「名前」だった− を与える代わりに人質である龍星と入れ替わらせ、将来に備えて密偵として育てるのだった。
 皇帝が崩御し、皇太子が即位した。他に男子がいないため龍星は呼び戻され新しい皇太子となり、西夏の国の人質・砂浬を后として与えられる。入れ替わりに宰相の息子霧影(実は本物の龍星)は密偵として金に潜入し烏延の部下となる。
 宋と金の戦いが始まった。宋軍の指揮をとりつつ金の烏延へ情報を送る偽の皇太子龍星、金の戦士として戦いつつ宋軍へ情報を送る霧影。やがて皇帝が崩御により、龍星が玉座に就く。偽の人生を歩む二人は、本当の自分を取り戻せる日が来るのか?
 
 あら筋だけみると面白そうなのにねえ。なぜだか眠い。だって、展開が読めるんだもん。知っている話だからさ。でも、映画は最後まで緊張感を持続させる作りだったけど、児玉っちの技量じゃ、それはムリなのよね。あくまでも結論ありき、で、その中を埋める努力に乏しい。

 児玉っちは、なんちゅうか、「話」が書けないんだな。破綻しまくりでも、「起転転転」でも、齋藤君には「話」がある、「テーマ」があるんだけど、児玉っちは、まず、「キャラありき」なんだよな。「キャラ」を動かすと、話が動くカンジなの。だから、児玉っちが作り上げた(っても、どっかで見たようなアレだけどさ)に同意できる人は面白いと思うんだろうけど、同意できないとねえ、なんで「話」が「そのように」動くのか、繋がらないんだよねえ。いや、こうなんだろうなあ、とは、わかるんだけどさ。「こーゆーキャラだから」って設定、それは児玉っちとファンの共同幻想みたいなもんなんだけど、これを承知してないと、話が飛びすぎだよな〜、と思うわけだ。
同人作家と
言われるワケだよ

(この「共同幻想」ってのは、ある意味ヅカとしては
 正しい作り方なんだけど、ファンでない人間を巻き込む力が
 弱すぎるんだよなあ、児玉っちは。)
「天の鼓」でも思ったけどさ。この「キャラ」に、こういうことをさせたい、がメインであって、話に沿って役(キャラじゃないよ!)を動かすんじゃないんだよねえ。バウ作品なら、観客は主演者のファンが半分ぐらいだろうから、それでなんとかなるだろうけど、大劇場では、そうはイカンよ。それを考えたことがあるのかなあ。
 パ●リについては、「ネタがあるなら、もっと面白く書けよ!」としか言えないよ。敵陣営から情報を流し合い騙し合う、ってのは、確かに「インファナル・・・」。よくあるネタではあるんだろうけど。私は1回しか観ていないんでなんともいえないけど「本当の自分を取り戻させてもらう」あたりの会話が、まんまパクリなんでしょうね。児玉っちがインスパイア(笑)されたのは、映画だけではなく諸先輩ネタもです。「少しも早く」って誰かが言ったよ。亡霊が龍星を責めるダンスは石田さんの「鬼!」、んでもって、死人だらけで、屍累々の中での自分語りは谷先生だな、と。もっと考えろよな〜。
 あと細かいことだけど、西夏は宋より長く続くのでは?宋の宰相が李姓なのも気になる。ついでにいえば、中国で「鬼」は「霊(亡霊)」のこと。「あなたは人間の皮を被った鬼です」ってのは、ヘンな言い回しだよ(じゃ、ヒビキさんは鬼の皮を被った人間か?と思う私もアレだけど)。
 話も唐突だよなあ。いつ二組のカップルをくっついたのか。「もしや、俺の子が・・・」って、いきなり言われてもさあ。そうだろうとは思うけどさあ。もうちょっと描き込んでくれよ。反発する砂浬が龍星のキスひとつで大人しくなって、その上、長い暗転・・・。こりゃ、なんじゃい。「朝チュン」のつもりなら、いっそ、すずめを鳴かせろや!!そこまでベタに作ったら許すぞ!!!皇帝が人払いしたハズの場所に、女が乗り込んでくるのは相変わらず。これを「矛盾」ではなく、「児玉っちならではのネタ」までに昇華できれば、、、、、、、。アカンか、、、、。


 とうこちゃんの龍星。正直言って齋藤作品ほどの魅力はない。児玉っちが思うとうこちゃんの魅力が、私のツボを外れているのでしょう。歌も良いし、演技もいいんだけどさ。それよりも、ちょっと年齢を感じた。レオンくんが2番手のせいかなあ。この半年ぐらいにトップ就任が決まらないと、たいへんキツイ。もしかして、使うだけコキ使われて終わりなのかしら?そして、それはキリヤンも??むうーーーー。
 霧影のレオン君はワタル君系の演技。大らかだ。歌もちょいワタル君。抜擢が続いているせいか、コスプレ衣装での動きもなかなか良い。フィナーレで「おねえさん」に戻らなければもっと良し。間違いなくトップ候補。
 霧影の恋人役はウメ。ハキハキした口調の台詞は聴き取りやすい。歌も安定しつつある。殺陣にもうちょっと「殺気」が加わるとイイね。いまだと、たんなるダンスだ。
「殺気」が加わったら、
ビジンダーを演ってもいいぞ。

許可する (byケロ)
(ケロ繋がりで松田さんは新公フランツね。って本公演は???)
 龍星の后・砂浬は南海(みなみ)まりちゃん。頭が少々大きいけど(鬘のせい?)、ヒロイン系の芝居が似合っています。潤い系、癒し系。台詞も聴き取りやすい。
 李宰相の磯野さん、そして烏延の星原さんは、さすがの貫禄!カッコイイのだ。それに負けないのがキンさんである!金ピカの衣装を着て、金ピカの簪てんこ盛りの髪飾りを付けて大笑いする図は、もう、言葉では言い表せません。素晴らしい!ワンダフル!!その他は宰相夫人の涼乃かつきさんの「優しい母」の演技が印象に残りました。
 あと、ダンスの振付と舞台美術も良かったです。6段+6段の階段を基本とした簡易なセットは狭めの舞台をうまく使って様々な風景を描いていました。斎藤恒芳氏の音楽も話にマッチしていました。完璧なバックアップ体制、と思っちゃう私がダメなのよね〜、きっと。

参考までに、「西夏について」と当時の地図
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%A4%8F